オバーのてぃあんだー
えーりには幼い頃に食べ親しんだおかずがある。
それは幼い頃オバーが作ってくれたふしかぶ(干した大根)と三枚肉(豚バラ肉)を塩味で煮詰められたおかず、ふしかぶウンブシーだ。ごくごくたまに贅沢で干し椎茸が入っていた。
ふしかぶは大根の乾物で保存食として常備されていた。本土でいう切り干し大根だが、沖縄ではたくあんのように太いままで干してるのもある。それを水で戻してしんなりしたとこでだし汁で煮詰めていく沖縄ならではのおかず。余計な味付けがない代わりに飽きがなく、いつでも食べられるって感じ。えーりはそれのみをガッついて食べていた。それぐらい好きだった。
大人になってそれがどうしても食べたくなって、子供の頃に作ってもらった味を思い出して作ってみた。
不思議なことに何十年も経っているというのにあの頃食べた味をしっかり覚えている。今こうして書いていても味を思い出し生唾が出てしまうほどハッキリと覚えているのだから、感じるってとても凄いと思う。
えーりはオバーが作っているのを側で見てきたのと、なりにご飯を作ってきた者として煮詰めるおかずぐらい簡単にできるものと思って、20代のある日、意気揚々とふしかぶウンブシーに挑戦してみた。
簡単に作れるものとたかをくくっていたえーりだったが、結果はさんざんで、オバーが作ってたふしかぶウンブシーとは似ても似つかない、そっけないというか、とても味気ない出来ばえだった。
オバーが使っていた調味料よりはしっかりしているはずなのに、オバーのほうが深みがあって美味しい。煮詰める時間が足りないかと思い、塩味を加えてしばらく煮詰めてみるのだが、なかなかどころか全くもって近づかない。どうしたら近づけるのかがわからなくてその時のふしかぶウンブシーは残念な仕上がりで終わった。そんなことがあってしばらく作る気を失せていた。
それから何年も過ぎて30代になった頃、失敗した苦い経験はすっかり忘れ、オバーの味を思い出しながら2度目の挑戦。
この時も1度目とお同じように、たっぷりの鰹節の出し汁と薄口の塩味でグツグツ煮た。
でも、オバーのようにはいかない。
何でだろう、、、?
材料は同じで、出汁はかえってえーりのほうが贅沢だ。
でも、美味しくない。箸がすすまないのだ。他のおかずを食べ忘れるほどガッついていたのに、、、。
それからしばらくして「えーりにはオバーの味は出せない!」ってなって、えーりは作るのを諦めた。
今では最後に挑戦したのがいつだったか忘れるほど月日が経っている。
そしてえーりに作ってくれていた頃のオバーの歳になった。
諦めていたはずが、前回ここで大根ジューシーを取り上げた時、またもやこのふしかぶウンブシーを思い出したのだ。
思うような出来に仕上げることができなかったふしかぶウンブシーをまた作ってみたくなったのだ。
歳のせいか、またはあれだけ失敗を繰り返してきたお陰か、以前のようなできて当たり前の傲慢さはなく、「作ってみたい💓」という気持ちだけになっていた(笑)
そんなこともあって、このコーナーをアシスタントとして手伝ってくれている智ちゃんに「成功例だけじゃなくて、出来ない例として取り上げるのもいいんじゃない?だから今回は残念レシピでいく!」ということでの取り組みだったのだ。
思い通りにいかないのを承知でやるんだからどんなバカ?(心の声)
ところが、いざやってみると、なんとオバーの味に仕上がっていた(笑)
いや、正確にはオバーの味に非常に近い味に仕上がっていたのだ。
幼い頃食べたオバーの味に再び出会えたことと、お腹をすかせて食べた時の美味しさと充足感。食べていたあの場さえもが蘇ったことに喜んだ。そして、あの時感じた味が今なお忘れずに有るということに気づき、人は感じたことは忘れない!感じるってこういうことなんだと気づいた。
ただ引っかかることが1つあった。
それは作れた割には興奮しない自分がいたからだ。まるで夢の中にいる感じ。
それだけが気になっていた。
そして2、3日が過ぎ、記事としてこの経験と向き合うことになった。
一連の流れと、自分の気持ちを見ていくと、えーりはえーりのためにこのふしかぶウンブシーを作ったことに気づいた。
正しくは作らされたのかも、、、
なりに出来ると思っていた自分の自惚れで出来ない自分を経験し、諦めたことで敗北を受け入れ、改めて1から出直し、自惚れた自分を改めることができたことで作れたのだとわかった。
ふしかぶウンブシーが作れなかったのには意味があった。
長い時を経て、経験したことで大切なことに気づかされたのかと思うと感謝しかない。
大袈裟と思うかもしれないが、改めて経験って本当に凄いと思う。
たかがふしかぶウンブシー、えーりにとってはされどふしかぶウンブシーなのだ。
またひとつ、えーりに大切にしたいおかずが増えた。
有り難いなぁ〜
・ふしかぶ(干し大根)- 3 本
・三枚肉 - 280g
・干し椎茸 - 2 枚
・昆布 - 1 枚
・椎茸の戻し汁 - 500cc
・水 - 200cc
・塩 - 小さじ 2
・粉だし - 小さじ 2
・白だし - 大さじ 1
★容量は、あくまでも目安! 自分好みに足したり引いたりして「美味しく」食べてね!
by:まーさん食堂スタッフ一同
・「三枚肉」は、さい箸が通るぐらいまで茹で、2センチ幅の棒状に切っておく。
・「昆布」と「干し椎茸」は、しっかり水で戻し、「昆布」は 1cm 、「椎茸」は 7mm 幅に切る。
(椎茸の戻し汁は煮る時に使う)
・水に戻された「ふしかぶ(干し大根)」は、水で洗って5、6cm の長さに切っておく。
(太い場合は縦割りに切る)
鍋に「ふしかぶ」、「三枚肉」、「昆布」、「椎茸」を「椎茸の戻し汁」500ccと「水」200ccを入れて火にかける。
味つけとして「塩」、「粉だし」、「白だし」を何回かに分けて入れ、煮る。中火で蓋をして煮はじめ、グツグツしてきたら弱火にし、具材が柔らかくなるまで煮続ける。
「ふしかぶ」が箸で割れるぐらい柔らかくなったら 完成❣️
※段階を経て味つけをするのは、水分の蒸発によって塩辛くならないようにするため。
※煮あがる前に だし汁が無くなるようなら、湯か、だし汁を足すと良い。