今回は父の好物の話をしたいと思う。
えーりの父はわずか4、5歳で両親を戦争で亡くしている。世にいう戦争孤児ってこと。
終戦後は孤児院で収容されるのだが、当時の孤児院は名ばかりで、毎日が飢えとの戦いだったという。
よほど飢えが辛かったのだろう、父は食べ物を求めて二人の兄と共に孤児院を抜け出した。
しかし、当時の沖縄は何処もかしこも焼け野原で雑草1本無く、父は飢えから逃れることはなかった。食べれるものなら何でも食べるしかなかったと言うが、何を食べたのかは母にさえ言わなかったと。
そんな父の食の好みは子供ながらに偏ってみえた。両親を戦争で亡くし、食事らしい食事は食べれなかったのだから致し方ないと理解できる。
戦後、 父のような子供たちは駐留している米兵に「ギブミー、ギブミー」とお菓子や缶詰を物乞いのようにもらって飢えをしのいでいたという。テレビのドキュメンタリー番組のようなことを父は経験していたのだ。
父は米兵がくれた大豆のケチャプ煮の缶詰を初めて食べた時、あまりの美味しさに感動したことをその缶詰を食べるたびに話していた。父があまりにも美味しそうに食べるので、えーりもつられるように食べてみるのだが、何度食べても父のようには美味しく感じることはできなかった。
熱々ご飯の上に大豆のケチャップ煮をのせて頬張る父は上機嫌になって、一口ひとくちに幸せを噛み締めている様に見えた。
我が家ではその大豆のケチャップ煮の缶詰を父一人が食べ尽くしていた。
どんなに断っても「まず食べてみろ」としつこく言われた時にはマジになって怒ったことも何度もあった。
で、なぜそんな昔話をするのかというと、父が好きだった大豆のケチャップ煮って本当にそこまで美味しくなかったのかな〜とふと思ったからだった。そしてその大豆のケチャップ煮の缶詰を食べてみることにしたからだ。
早速買いに行くも、製造中止でどこを探しても店頭に無い。
無いと余計に欲しくなるもので、大豆を買って作ってみるしかなくなった。大豆の水煮缶を買い、子供の頃に食べた味を辿りながら 少しばかりの砂糖を加えてケチャップで煮詰めた。
仕上がってみるとえーりの好きな大豆の食感とケチャップの酸味が合って美味しく仕上がっていた。
〈これが大豆のケチャップ煮〉
それを食べながら父がいろんな物にケチャップをつけて食べていたことが思い出された。焼きそばにも使っていたし、トンカツを食べる時にもソースではなく必ずケチャップで食べていた。卵焼きにもたっぷりケチャップをかけて食べることも父の定番だった。
父は豆が好きということではなく、ケチャップで煮詰めていたから好きだったんじゃないかな〜と、ケチャップ煮を食べて気づいた。
子供の頃にお腹を空かせて食べた時に感じた美味しさは大人になっても尚、父の中に消えずにあるのがわかった。
そんな父を思い出しながら沖縄風焼きそばケチャップ味で作ってみる。沖縄そばの麺にケチャップがしっかり絡んで絶妙な味だ。まるで沖縄ナポリタンって感じ。
子供の頃、父が作ってくれた焼きそばには勝てないが十分美味しい。なんやかんや言いながらもえーりもケチャップ味が好きになっていた。
父が作って食べさせてくれたお陰でその味覚は受け継がれていたのだと思うと、好きの幅が広がっていることに今では父のケチャップ好きに感謝している。
父のように子供の頃に食べて美味しいと感じた食べ物が生涯通して美味しいと感じることは誰にでも一つや二つあると思う。
そんなソウルフードとも言える父の大豆のケチャップ煮を何も真っ向から否定するまでもなかったな〜と今は思う。
飢えていた父にとってケチャップ煮は本当の意味でソウルフードになっているとえーりは思った。
そんなケチャップ煮を受け止めることさえしなかったことを今は後悔している。
父を理解するだけで嫌いが好きに変わるものだとこの経験からわかった。
自分の拘りを脇に置いて 相手を理解する!
ただそれだけで好きが拡がるのなら、人生は豊かで楽しくなるんじゃないかな〜って大豆のケチャップ煮を食べながら思ったことだった。
・沖縄そば - 1袋
・ピーマン - 3個
・にんじん - 大 1/2本
・玉ねぎ - 大 1/2個
・ウインナー - 3本(ロングタイプ)
・ケチャップ - お好みの量
・和風粉だし - お好みの量
・砂糖 - 少々
・醤油 - 少々
・油 - 大さじ 1
★容量は、あくまでも目安! 自分好みに足したり引いたりして「美味しく」食べてね!
by:まーさん食堂スタッフ一同
・「麺」は、湯通しして ほぐしておく。
各具材を食べやすい大きさにカットする。
フライパンに「油」大さじ1 を入れ、「人参」、「玉ねぎ」の順番に入れて炒め、ちょっとしんなりしてきたら「ピーマン」、「ウインナー」を入れて炒める。
「和風粉だし」2つまみ を入れて混ぜ、真ん中に「麺」を入れ混ぜながら炒める。
「ケチャップ」を少しづつ足しながら炒め、味見をして、「和風粉だし」少々、「砂糖」少々 と「醤油」少々 でお好みの味に整えて 完成❣️
※1度に材料を合わせて混ぜるのが難しい場合、「人参」「玉ねぎ」「ピーマン」「ウインナー」を炒め 1度 器に取り出して、麺を少し炒めてから合わせて味付けしてね!